2016年2月21日日曜日

古代ローマの消費税

古代のローマの消費税と言えば売上税と関税がプラスした率になるが、帝国の首都ローマでのそれが6パーセントでも、国境に沿って連なる軍事基地のある地方は、最高でも3パーセントだった。

理由は、蛮族という仮想敵への最前線に位置することと、それへの対応策である軍事基地があることへの補償、であるのはもちろんだが、それだけではない。

ローマの軍団基地は必要な物資を周辺地域から購入することを義務づけられていたので、消費税を低く押さえることによって、その地域へのヒトとカネの導入を狙った策でもあったのだ。

BUNGEISHUNJU 2016.3, P92-93 文藝春秋2016年3月号[雑誌]

2016年2月13日土曜日

しゃぶしゃぶ

…そんな静かな一角で、元はお茶屋だった築150年の木造家屋が、どっしりとした存在感を放って佇んでいる。戦後ずっと、「十二段家本店」が暖簾を掲げ続けてきた建物である。

店の創業自体は大正時代にまで遡る。名物のお茶漬けで長らく知られたが、戦後すぐにここへ移転してからは、良質な肉を気前よく供するとして評判になった。

昭和22年には、新たなメニューと称して「牛肉の水炊き」なるものを編み出し、評判をとった。

中国の火鍋をヒントにした料理で、沸騰した鍋の湯に牛肉をくぐらせ、タレをつけて食べるもの。つまりは現在でいう「しゃぶしゃぶ」だ。

今ではすっかり定番中の定番となったこの牛肉の食し方は、同店を嚆矢とする。

(BUNGEISHUNJU 2016.2, 名作 名食)文藝春秋 2016年 02 月号 [雑誌]

敵は、恐怖心それ自体にある。(フランクリン・ルーズベルト大統領)

U2は昨年12月6、7の両日、パリでコンサートを開いた。

もともと11月14、15の両日、開催の予定だったが、その前日のISテロ事件で急遽、キャンセルした。

テロは、コンサート・ホール、バタクランで米国のバンド、EODM(イーグルズ・オブ・デス・メタル)の演奏中に起こった。

U2は、恐怖のさめやらぬ3週間後再び、パリで興行した。その際、EODMを招待し、演奏の最後に彼らと一緒にパティ・スミスのPeople Have the Powerを歌った。

U2はアイルランドのバンドである。ここは長い間、アイルランド共和軍(IRA)のテロに苛まれた。リードボーカルのボノ自身、14歳の時、33人の犠牲者を出したダブリンのテロの現場に居合わせたトラウマを引きずっている。

ボノはニューヨーク・タイムズの質問に、次のように答えている。

「テロリズムは人々が恐怖に駆られることを前提にしている。僕たちは絶対にそうはさせない。だから、ロックン・ロールをやる。ロックは生を楽しみ、挑むことを喜びとするからだ」

「化け物をやっつけるために自ら化け物になってはいけない、とアイルランドでは互いに言い聞かせている」

(BUNGEISHUNJU 2016.2, p223)文藝春秋 2016年 02 月号 [雑誌]

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