2023年4月29日土曜日

縄文時代に自分の家を自分で燃やす儀式について

 以前、岩手県の縄文遺跡「御所野遺跡」を訪れた時に、縄文時代の人々は何らかの儀式として、自分の住んでいた家(竪穴式住居)を自から焼いた、と聞いたことがある。自分の家を焼いてしまうという事はどうしてだろうかと、私は長い間、不思議に思っていたが、『アイヌの世界観』という本を読んでいてハッと気づいたことがある。そこには、次のような記述がある。


『あの世とこの世は同じ --- アイヌは、人間は死後の世界においてこの世とまったく同じ姿をし、同じ生活を送ると考えるのである。このため死者の埋葬に際してあの世での生活に困らないように、男性ならば弓矢、煙管、タバコ入れ、マッチ、大小の刀、椀や盆、イクパスイ(捧酒箸)などを、女性ならば針と糸、衣服、機織り道具、杓子、柄杓、椀、装身具などを一部壊して副葬した。さらに、死者がとくに女性の場合には小屋を燃やし、あの世に送ったのである。バチェラーが記すように、「妻が死んだときには、夫は小屋を燃やし、妻とともにあの世に送らなければならない」と語るアエオイナの伝承が残る。』(『アイヌの世界観』(山田孝子著 講談社学術文庫)p.57〜58 )


もしかしたら、縄文時代の人々の、自分の家を焼いて死者と共にあの世に送り出すという儀式が、アイヌの人々にも継承されていたのかもしれないと思った。


そして、アイヌの人々が今日まで脈々と伝えてきてくれたから、現在に生きている私の疑問が一つ解け、縄文時代の人々の儀式だったかもしれない事の一つに、触れることができたような、そんな気がした。

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