2016年5月1日日曜日

1986年の比較試験結果:肺がん検診での胸部エックス線撮影が「有 害 無 益」

…そして行政の影響が大きい。欧米では曲がりなりにも、政府機関が検診中止を勧告したりして、国民寄りの姿勢を見せています。ところが日本では、厚生労働省(厚労省)が音頭をとって検診を推進しているのです。その好例が肺がん検診で、胸部エックス線撮影が有害無益という、比較試験結果が公表されたのが1986年。欧米ではこうした試験結果をうけ、ついに肺がん検診が開始されることすらなかったのです。

 ところが厚生省(現厚労省)は87年に老人保健法を改正し、市町村に肺がん検診をするよう仕向けました。比較試験結果が公表された翌年のことです。結核が激減したため、結核予防会などが行う検診事業の救済策だったと考えられます。

 そして2002年、厚労省は健康増進法を制定し、肺がん検診を含む種々の検診を健康増進事業として市町村が実施するよう義務付けました。検診の無料クーポンが届けられ、「検診を受けられましたか」という電話がかかってくるようになったのはその為です。制定当時。あらゆる検診の無効性がデータ上明らかだったので、健康増進法の目的は別にあります。

ひとつは厚労省の権限拡大。

もう一つは医療産業の保護・育成。

文藝春秋2016年5月号[雑誌] p.324)

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