店の創業自体は大正時代にまで遡る。名物のお茶漬けで長らく知られたが、戦後すぐにここへ移転してからは、良質な肉を気前よく供するとして評判になった。
昭和22年には、新たなメニューと称して「牛肉の水炊き」なるものを編み出し、評判をとった。
中国の火鍋をヒントにした料理で、沸騰した鍋の湯に牛肉をくぐらせ、タレをつけて食べるもの。つまりは現在でいう「しゃぶしゃぶ」だ。
今ではすっかり定番中の定番となったこの牛肉の食し方は、同店を嚆矢とする。
(BUNGEISHUNJU 2016.2, 名作 名食)文藝春秋 2016年 02 月号 [雑誌]