2015年9月27日日曜日

『スーパージェネリック』カテゴリー新設で認可ハードルを低くすべき ~ P-THP

正式名称は「P-THP」。Pはポリマー(高分子物質)で、THPはピラルビシンという抗がん剤である。ピラルビシンは、1988年に発売された古い抗がん剤。つまりP-THPとは、ポリマーにピラルビシンを結合させたものた。(BUNGEISHUNJU 2015.10 p324)
P-THP療法を受けた患者からの聞き取りと、D医師への取材から、およそ次のようにいえると思う。(一)SさんやBさんのように、ステージⅣでも予後を極端に伸ばしている人は、抗がん剤が初めての人に多い。おそらく薬剤耐性ができていないからだろう。逆に何度も抗がん剤を受けた人は治療効果は低い。(二)がんの種類(部位)によってP-THPの効果にばらつきがあるが、前立腺がんには特によく効く。(三)P-THPを5回以上受ける体力のある人の予後は確実に伸びる。(BUNGEISHUNJU 2015.10 p330)
P-THPの今後の課題は、効くがん種と効かないがん種をハッキリさせることだろう。それにはしっかりした臨床試験が必要だが、P-THPを製造したいという製薬会社が現れないという。なぜなのか。「理由は簡単です。儲からないからです」と前田教授は断言する。P-THPにつかわれているピラルビシンすでに特許が切れ、ジェネリック薬で薬価が決まっている。だが、高分子を付けると別の薬をいう扱いになるためもう一度治験をしなければならない。… 「治験のためフェーズⅠで30人~40人集めると10億円。トータルで数百億円かかるのが普通です。そんな大金をかけたら、P-THPの薬価を上げて回収するしかありません。私は、コストをかけずに普遍性のある薬剤を生み出すことが重要だと思っていますから、そういった話に乗るわけにはいかない」… 前田教授はこんな提案をしている。「既存の薬剤に付加価値を付けた場合はすでに安全性は認められているのだから、『スーパージェネリック』という新しいカテゴリーを作って認可のハードルを低くすべきです。経費を大幅にカットできます」
日本人の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死ぬという。このまま抗がん剤が高額化していったら、日本の医療は確実に破たんする。国民皆保険で気づかないが、高額医療はすべて税金など公的資金でまかなわれているのだ。(BUNGEISHUNJU 2015.20 p333)文藝春秋 2015年 10 月号 [雑誌]

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