2014年8月29日金曜日

『経験に基づく選択』


「経験に基づく選択」は、プロスペクト理論の「記述に基づく選択」とは異なるルールに従って行なわれる。「記述に基づく選択」では可能性の効果が働き、めったにない結果に対して確率に見合わない過大な重みがつけられるが、「経験に基づく選択」では過大な重み付けは皆無でむしろ過小になりやすい。(中略)この解釈はまだ定まっていないが、稀な事象がなぜ過小評価されがちなのかは、一言で言えば、多くの回答者は稀な出来事を全然経験していないからである。例えばカリフォルニアの住民の大半は大地震を経験したことがない。また2007年の時点では、深刻な金融危機を実際に経験したことのある銀行家はいない。
 
稀な事象の確率がよく(いつもではない)過大評価されるのは、記憶の確証バイアスが働くからである。つまり、そのような事象が思い浮かぶと、あなたの頭の中でそれを現実のものとして思い描く。そのことに特別に注意が向けられるとき、稀な事象は過大に重み付けされる。そして、逆に、頭の中に思い描けない時は、一転して無視されることになる。
 
このように、稀な事象に関する限り、私たちの脳は正しい判断を下すようにできているとは言いがたい。(ファスト&スロー より)

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