2019年10月22日火曜日

表現者というのは対話者です…もちろん、がんは答えてくれません。でも話をしているうちに…(大林監督)

…表現者というのは対話者です。だから、僕は「おい、がんよ、お前さんも生きたいだろうから一緒に暮らしていこうよ」と体の中に語りかけるんです。「あと二十五年くらいなら俺がお前の面倒をみてやるから、少しは俺のために我慢するくらいの努力をしてもおかしくないんじゃないの?」とね。二十五年というのは、人間は今の時代、大病や事故がなければ百十歳、百二十歳まで生きられるという説から出たものです。

もちろん、がんは答えてくれません。でも話をしているうちに、この僕自身も、地球にとってはがんだと気がつきました。


いかに僕ら人間が勝手気ままに暮らしてきたことが、自分の暮らす地球を壊してきたか。戦争もそうです。そんなことに思いを巡らせながら、「よし、お互いに少し我慢して優しくなろうね」とがんと自分に言い聞かせています。


( BUNGEISHUNJU 2019.10, P292, 大林宣彦監督「余命3ヶ月宣告から3年生きた」より)

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