2015年2月12日木曜日

言葉と心と力と行為

近代人であるゲーテが、中世人であるファウストに仮託し、世界観の歴史を描いた作品が『ファウスト』だと田辺(元)は解釈している。そこから、ゲーテが想定しなかった未来も見通すことができると田辺は考える。〈それを更に私が歴史的に、ギリシャ、ヘブライ、近世、現代といふやうに割当てて見たのですが、或程度当たるといふことは、ゲーテの直覚が彼の時代をも超えてその後の現代をも観透してゐたと解してもいいでせう。偶然にせよこれは面白い。ギリシャでは言葉であり、ヘブライは心(神の意志)であり、近世にくればそれが力であり、それから歴史主義の時代、現代になれば、ワザであり行為である、と解釈することができる。〉(BUNGEISHUNJU 2015.2 p.407)

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